今回の作品展に出品させて頂きました作品の構想から完成するまでを振り返ってみたいと思います。
今回は生地から始まった作品作りでしたし、いつもと違う素材、いつもと違う方法で製作した部分が多く、これまでの作品作りと比べてもとても特別だった気がするので、備忘録も兼ねて綴っていきたいと思います。
既に別の記事でも書きましたが、今回使った生地はアンティークショップで出会った19世紀中~後期(ナポレオン三世時代)に織物で有名なフランス・リヨンで織られた絹織物ーブロケードです。
対になった細長い絹織物ー60cm×120cmが二枚ーで、欧米では装飾としてよく見られますが、壁にシンメトリに飾るパネルに仕立てるためのものでした。
ブロケードは日本で言えば「錦」に当たる絹織物です。
表と裏を見ると表の黒色の地の部分は裏側では薄緑色になっていて、この織物が二重構造であることがわかります。
信じられないくらい細い糸で織られていてだからこそこのように繊細な表現ができるのでしょう。
初めて見た時からこの朱子織のように光沢のある美しい絹織物に強く惹かれていて、特に黒地にマーガレットの花々が闇に浮かび上がるように写実的に表現されているその構図の素晴らしさが印象的でした。
中央部分は花が密に、両脇は無地場が多く表現されていて、この「間」がとても東洋的に感じられました。
花の花芯の黄色も何種類もに使い分けられていて、茎や葉の緑も部分的にしか使われておらず、残りは黒とグレーの濃淡で影のように表現されています。
花の表情や向きにも動きがあり、蕾やまだ花びらが開ききっていないもの、正面を向いたもの、横を向いたもの、後ろを向いたもの・・。何という繊細さなのか。
数年前に出会った時はこの織物を自分の作品の素材にしようなどとは思わず、只々その美しさに惹かれていただけでした。
数年経ってもまだ誰かの手に渡ることもなくお店の片隅で眠り続けていたこの絹織物と再会した時は作品展出品のための作品作りの構想を練っていた時と言うこともあったのか、自然に「これで作品を作りたい」と思っていました。
そしてそれを家に「連れ帰った」ものの、何だか少し畏れ多くて気後れしてしまったことも確かです。
一時間くらいずっとこの織物を見続けて、一体どんな作品にしたらこの布が輝くのかをぼんやりと考え始めました。
そして何週間か考え続けて漸く作品の青写真が頭の中に出来上がりました。
次回に続きます。
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